フィンテック企業のクールビックス(CoolBitX)は、マネーロンダリング対策を進める政府間組織である金融活動作業部会(FATF)の「トラベルルール」にまだ準拠できていない事業者に対してソリューションを提供していく。
クールビックスが7月21日にコインテレグラフと共有した声明によると、同社は仮想通貨(暗号資産)がフォレンジック調査を手掛けるエリプティック(Elliptic)と提携して、FATFのトラベルルールの準拠しなければならない仮想資産サービスプロバイダー(VASPs)のマネーロンダリング対策(AML)規制に対処していく。
VASPは、クールビックスが提供するソリューションである「シグナ・ブリッジ(Sygna Bridge)」とエリプティックの仮想通貨トランザクション・ウォレットのスクリーニングツールの両方にアクセスして、トラベルルールのAMLガイドラインに準拠できるようにする。
「金融活動作業部会が世界中で仮想通貨ガイダンスを推し進めているが、VASPにとってコンプライアンス維持と犯罪行使防止が非常に困難なものになる可能性がある」と、クールビックスのマイケル・オウCEOは述べている。「シグナとエリプティックの様々なツールを使用して、変化するAML/CFTの法律や規制に違反しないようにクライアントを保護し、規制当局が違法なマネーロンダリング活動に対抗し、コンプライアンスを維持できるようにクライアントに提供できることを嬉しく思う」と、声明の中で述べている。
「トラベルルール」導入から1年
FATFは、仮想通貨を使った犯罪を防ぐため、仮想通貨関連のマネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与(CFT)対策、本人確認(KYC)といった仮想通貨企業向けの一連のガイドラインを2019年6月に導入した。これらの要件は「トラベルルール」として知られるようになっている。
FATFは「国やサービスプロバイダーによる新しい要件の実施を監視し、2020年6月に12ヶ月間のレビューを行う」と述べていた。
トラベルルール「シンガポールと韓国が先行」
FATFのガイドライン発表から1年が経過したが、多くの国はFATF要件の適応に取り組んでいる
クールビックスのオウCEOは今年5月、シンガポールと韓国がトラベルルールの順守に関して規制で先行していると、コインテレグラフに語っている。シンガポールと韓国では、仮想資産サービスプロバイダー(VASP)がFATFガイドラインを満たすための期限を設定している。
7月7日に発表されたFATFレポートでは、仮想通貨に関する基準の12ヶ月間のレビューの結果をまとめている。
「(今回のレビューのためのサーベイに回答した)54の法域のうち 35の法域が現基準を実施しており、そのうち32の法域は暗号資産交換業者を規制対象とし、3の法域は暗号資産交換業者の活動を禁止している。残る19の法域は、国内法制において現基準をまだ実施していない」
FATFのレビューでは「AML/CFT上の義務の実施は概ね初期段階にあるが、確実に進捗がみられる」としている。「官民双方で対処すべき問題は引き続き残るものの、特に暗号資産交換業者において「トラベルルール」の実施を可能とするための技術的な解決策に関し、進捗が見られる」と指摘している。
FATFでは、1年間のレビューでは「現基準の影響や暗号資産市場がどのように変化したかを十分に理解する上では、比較的短いものであった」と述べている。
そこで、さらに12ヶ月間、2021年6月までモニタリングを実施するとしている。これにより、国内で基準を法制化するために2年間の期間を設けることになり、「暗号資産業界は、グローバルにトラベルルールのソリューションを導入するための時間を確保したことになる」としている。
また今後、暗号資産に関する改訂ガイダンスの公表や、犯罪事例の公表、民間セクターとの対話強化を進めていくとしている。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン